口コミでの営業妨害に対する対処方法とは?削除する方法まで弁護士が解説
営業妨害になるような口コミで成立する可能性がある罪とは
信用毀損罪(刑法233条)
刑法233条では、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し…た者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と定められています。
信用毀損罪は、簡単に言うと、嘘をついて、個人や法人の経済的な信用(支払能力など)や商品やサービスの信用を貶める犯罪です。
例えば、
・「あの会社は破産寸前だから取引するのは避けた方がよい」ネットに書き込んで、会社の経済的な信用を傷つける
・わざと商品に虫を入れて「虫が入っていた」という画像をSNSにアップして商品の信用を貶める
といった行為は、信用毀損罪に該当する可能性があります。
「虚偽の風説の流布」、「偽計を用いて」とあるように、流された情報が嘘ではなく、真実である場合、信用毀損罪は成立しません。
「毀損」とは、経済的側面における社会的評価を低下させる行為をいい、現実に評価が低下する必要はありません。
偽計業務妨害罪(刑法233条)
偽計業務妨害罪は、信用毀損罪と同じ刑法233条に「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、…その業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と定められています。
人を騙したり、勘違いや知らないことを利用したりして、業務を妨害すると、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
「業務」は、社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務を指します。具体的には、会社・企業・店舗・団体などの仕事ですが、営利性があるかは問題になりません。そのため、企業だけでなく、ボランティア団体であっても、業務妨害罪は成立します。
「妨害」は、「休業せざるを得なくなった」など妨害された結果が生じた場合だけでなく、業務を妨害されるおそれのある状態が発生しただけでも該当します。
例えば、口コミサイトで、「ここのレストランで食事をしたら異物が混入していた」などの嘘の書き込みをされ、店にクレームや問い合わせの電話などが殺到して対応に追われてしまった場合は、業務妨害罪が成立する可能性があります。
名誉毀損罪(刑法230条1項)
名誉毀損罪は、刑法230条1項で「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」と定められています。
「公然と」とは、不特定または多数の人に伝わる可能性のあることを指します。
グーグルマップや口コミサイトなどは、インターネット上で公開されており、まさに不特定または多数の人に伝わる可能性のある状態にあるため、「公然と」という要件は充足されるでしょう。
名誉毀損罪が成立するには、「事実」が「摘示」されている必要があるため、単なる意見や評価など、具体的な事実が記載されていない口コミ(例:「この店の料理はまずい」など)について、名誉毀損罪は成立することはありません。
「人の名誉を毀損した」とは、特定の個人や法人などの団体の社会的評価を低下させるおそれのある行為をすることをいいます。実際に社会的評価が低下する必要はありません。
「その事実の有無にかかわらず」とあるように、信用毀損罪や偽計業務妨害罪と違って、本当の内容が指摘されている場合でも名誉毀損罪は成立します。
ただ、刑法230条の2では、「前条第一項(※名誉毀損罪)の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」とされています。
例えば、商品の中に人体に有害な物質が含まれていたため、消費者の安全を守るために、SNSで注意喚起する場合などは、処罰されないと考えられます。
ネット上の悪質な口コミで営業妨害されたときの対処法
サイト運営者への削除依頼
サイトの中には、オンラインフォームやメールフォームを準備していたり、クリックするとメールソフトが立ち上がるようになっていたりするものがあります。これらのフォーム等を利用して削除依頼をする方法があります。
テレコムサービス協会の書式による削除依頼(送信防止措置依頼)
テレコムサービス協会という一般社団法人は、プロバイダ責任制限法関係のガイドラインの作成・公表を行っています。
このガイドラインに従って送信防止措置依頼をする方法があります。
送信防止措置依頼の流れは以下のとおりです。
①「権利侵害の通知書兼送信防止措置依頼書」を作成し、サイト管理者やプロバイダに郵送。
②サイト管理者等が本人からの依頼であるか判断。
③サイト管理者等が書込みをした人(発信者)に対して、その書込みの削除の可否を尋ねる照会をする。
④発信者から照会期間(多くの場合7日間)内に反論がなければ削除される。発信者から反論があった場合でも、サイト管理者等が「権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由」があると判断した場合には削除される。
裁判手続による削除
「削除仮処分」という裁判手続きがあります。
権利侵害が一応認められると裁判所が判断した場合に、一定額の担保金(30万円程度であることが多いです)を立てることで、「削除を仮に認める」という決定が出されます。なお、この担保金は、一定の手続きをすることで返還されます。
削除仮処分の決定が出されると、多くのプロバイダは削除に応じてくれます。
「仮」であるため、削除されてもまた元に戻るのではないかと心配される方もいますが、そのような事例は通常なく、一度削除されれば削除されたままになります。
申立てから決定がでるまで、1か月~2か月程度かかるのが通常です。
発信者情報開示請求によって犯人を特定
発信者とは、口コミ等を投稿した人のことです。
プロバイダやサイト管理者に対して、その発信者を特定するために情報の開示を求める手続きです。
これは、プロバイダ責任制限法によって認められているものです。
発信者情報開示請求が認められるためには以下の要件を充足する必要があります。
特定電気通信による情報の流
「特定電気通信」とは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」と定義されています。
インターネット上のウェブサイトで、誰でも閲覧可能な情報を発信することをいいます。
簡単にいうと、ウェブサイトへの書き込みのことです。
自己の権利を侵害されたとする者
名誉毀損等の書き込みされてしまった被害者のことです。
発信者情報開示請求は、被害者のみが行える手続であり、被害者でない第三者は請求できません。
被害者は、個人だけでなく、法人も含まれます。
権利侵害が明らかであること
名誉権侵害などの権利侵害の事実と、「違法性がない」とをうかがわせるような事情が存在しないことをいいます。
正当な理由が存在すること
発信者に対して、投稿削除や謝罪広告、損害賠償請求や刑事告訴を求める目的がある場合には正当な理由があると認められます。
興味本位で誰が書き込んだのか知りたい、報復するために知りたい、といった場合には正当な理由が認められません。
開示関係役務提供者に対して行われること
発信者情報開示請求は、サイトの管理者やプロバイダ等の開示関係役務提供者に対するものであることが必要です。
サーバ提供者、サイト管理者、インターネットサービスプロバイダなどを指します。
発信者情報に該当すること
「発信者情報」とは、プロバイダ責任制限法では、「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令でさだめるもの」と定義されています。
具体的には以下の情報です。
氏名、住所、メールアドレス、発信者のIPアドレス、IPアドレスと組み合わされたポート番号、携帯端末のインターネット接続サービス利用者識別番号、SIMカード識別番号、発信時間(タイムスタンプ)
開示関係役務提供者が保有していること
プロバイダなどの開示関係役務提供者が開示する権限を有しており、開示が実行可能であることをいいます。
犯人に対する損害賠償請求
犯人がどこの誰かがわかったら、民事訴訟において、名誉毀損等の不法行為(民法709条)の責任を追及して、損害賠償請求を行うことも可能です。
刑事告訴
刑事告訴は、犯罪の被害者などの告訴権者が捜査機関に犯罪事実を伝え、加害者の処罰を求めることをいいます。
名誉毀損罪は、親告罪といって、告訴権者の告訴がなければ検察官が起訴することができない罪になります(信用毀損罪、偽計業務妨害罪は親告罪ではありません)。
親告罪は告訴期間が定められており、「犯人を知った日から6か月」(刑事訴訟法235条1項)の間に告訴する必要があります。
「犯人を知った」とは、告訴権者が、犯人が誰であるかを知ることをいい、犯人の氏名・住所を知らなくても、犯人と他の者とを区別できれば告訴期間が進行します。
「犯人を知った日」は、犯罪行為が終了した日を指します。名誉毀損罪の場合、口コミが削除されなければ、犯罪行為は継続していて、終了しているとは考えられません。そのため、口コミが掲載されている限り、告訴期間は進行せず、削除されてから進行することになります。
口コミによる営業妨害でお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ
悪質な口コミでお困りの企業様に向けて、弁護士が法的措置等を活用して下記のような対応が可能です。
削除代行を行う事業会社もございますが、口コミに対して対応していきたい方針によって対応できる策も異なります。まずは弁護士にご相談いただき、対応方針を検討することをおすすめします。
削除請求
Google、ヤフー、Twitter、Facebook、5ちゃんねる等に書き込まれたネガティブなクチコミ投稿や、検索エンジンの検索結果などについて、当該サイト運営会社に対して削除を求めることができます。
ウェブサイトによって方法が異なるのですが、それぞれのサイトに適した方法で削除を求めていきます。 サイト運営会社が裁判外で削除に応じてもらえることもありますが、応じてもらえない場合は、削除仮処分という手続を裁判所で行うことになります。
発信者情報開示請求
インターネット上の投稿の多くは匿名で行われているため、投稿した人に対して損害賠償請求等法的責任を追及したいと考えても直ちに請求することはできません。そのような場合、ウェブサイト管理者やプロバイダに対して、発信者情報開示請求という手続きを行うことにより当該投稿をした者(発信者)の氏名・住所等を特定できる場合があります。
その他サポート
風評被害予防体制構築
悪質な口コミは一度削除をしても、継続して発生をしてしまうケースが多くあります。クラウドサービス等の連携・提供をしている場合には、サービスを利用して継続して監視を行い、風評被害を予防することも可能です。当事務所の場合は、インターネット上の誹謗中傷・風評被害を検知・分析できるクラウドサービス「ウェブリスククラウド」の活用を行うことで、悪質な口コミを放置することなく迅速に対応することが可能です。
削除が難しい口コミに対するフォロー
ネガティブな内容の口コミであっても、虚偽の記載だということを証明しづらい場合は削除が難しいケースもあります。当事務所ではそのような場合のご相談もお受けしておりますので、削除が難しい口コミに対するフォロー方法もアドバイスいたします。
当事務所での対応実績
当事務所では下記のようなご相談をいただき、削除請求や損害賠償請求の案件対応実績があります。
・動物病院様のGooglemapの誹謗中傷クチコミ削除に成功した事例
・Googleクチコミの投稿者を特定し、当該投稿者と交渉して削除及び賠償金の獲得に成功した事例
・Calooペットの誹謗中傷クチコミ削除に成功した事例
悪質な口コミによる営業妨害でお困りの方は、当事務所までご相談ください。