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動物病院における手術承諾書(同意書)の必要性について|獣医師様向けペット法務に強い弁護士

動物病院への訴訟の増加

一昔前に比べ,ペットの飼育頭数が増加していることや,高齢者世帯や単身世帯等ペットを飼育する世帯の増加,昔に比べてペットを家族の一員として考える傾向が強まっていることなども相まって,ペットに関するトラブルの相談や,動物病院に対する訴訟も増加しています。

ペットの飼い主からのクレーム

動物病院の典型的なトラブルとして,飼い主からのクレームがあります。生き物を扱う仕事の性質上,獣医師が最善を尽くしてもお亡くなりになってしまったり,病気が治らなかったり,結果として悪化してしまったり,という事態は避けられません。また,獣医師やスタッフの対応に不満を持つ患者様も少なからずいらっしゃるようです。

口頭での同意により証拠が不十分

このようなクレーム事案において,動物病院が自らの正当性を主張し,クレームを適切に処理していくには,診療において説明義務を尽くしたこと,診療そのものに過失がないことを説明できる客観的な証拠をそろえておく必要があります。この点,麻酔・手術のリスクや治療方法のメリットデメリットの説明,患者様の同意を口頭で済ませてしまうと後から獣医師側の正当性を裏付ける証拠がなく,言った言わないの水掛け論に陥り,紛争が深刻化することがあります。

損害賠償請求のリスク

協議による決着が難しい場合,飼い主は動物病院を相手取り訴訟を提起することがあり得ます。リスクとしては,訴訟における賠償金のみならず,訴訟提起されることで近隣住民の風評被害などにより,病院経営に大きな経済的ダメージを与えることも考えられます。

手術承諾書(同意書)を準備するメリット

このようなリスクをコントロールする手段の一つして,事後の紛争に耐えうる手術承諾書(同意書)を作成しておくことを強くお勧めしています。手術承諾書には,以下のようなメリットがあります。

最低限のリスクの共有

手術に関連して,よくある飼い主様とのトラブルは「こんなに危険だと思わなかった」「こんなリスクがあるなんて聞いてない」といったクレームです。手術承諾書において,麻酔のや当該手術のリスクを漏れなく記載し,説明しておくことは,飼い主様とリスクを共有し,「聞いてなかった」という類のクレームを未然に防ぐことができます。

手術内容に関する理解・共通認識

上記と重複しますが,手術承諾書において,当該手術の内容を飼い主様にもわかりやすい表記で説明しておくと,飼い主様がリスクを適切に理解,把握できますので,獣医師と飼い主様との間の共通認識を形成しやすくなります。術前・術後のペットのケアまで考えると,飼い主様と共通認識を持って治療に当たることは非常に大事です。

訴訟等に発展した際の証拠

動物病院におけるいわゆる医療過誤訴訟で多くの場合,主たる争点となるのは,

①説明義務を尽くしたか,

②治療行為が,平均的な獣医学に達していると評価できる相当なものであったか,の二点です。  

ちゃんとした手術承諾書は,このうちの「①説明義務を尽くしていたか」を客観的に証明する証拠として高い価値を有し,獣医師,動物病院が自らの身を守る盾となります。

手術承諾書(同意書)に設けるべき項目とポイント

項目①行う施術に関する内容

具体的にどのような治療を行うのか,飼い主に理解できる表現(場合によっては図やイラストを記載するのも効果的です)で記載しましょう。

項目②行う施術に含まれるリスク

該施術に伴うリスクを具体的に説明しましょう。例えば,どのような副作用が,どの程度の確率で発症するのか,と言った内容です。また,麻酔を伴う手術を行う場合は麻酔のリスクも詳細に記載しましょう。さらに,当該疾病の治療において,複数の治療方法があるときは,それぞれの治療方法のメリット・デメリット(リスク)を漏れなく説明できる内容にしましょう。

項目③飼い主の署名

上記の内容を漏れなく記載したうえで,末尾に飼い主様の署名押印を忘れずにもらいましょう。

記載項目の例

例えば,弊所作成の手術承諾書の書式では以下の項目を記載しており,顧問先の動物病院様に提供しています。

1 病名・症状

2 手術名

3 麻酔の方法・内容及びリスク

4 手術の必要性,手術をしない場合の経過予測

5 手術自体の危険性及び想定される合併症の有無とその内容

6 他の治療方法との比較,メリット,リスク

7 経過予想および 想定される後遺症

8 通常は発生しないが起こり得る重大な危険性

9 その他確認事項

10  「上記の通り獣医師から説明を受け,内容を理解しましたので,当該施術を承諾します」  

11  飼い主様署名欄

承諾書・同意書等の各種書面に関するご相談はペット法務に強いなかま法律事務所へ

当事務所では動物病院をはじめとしたペット事業者様に特化して法的課題を解決するためのサポートを行っております。今回のコラム内容にあった承諾書に関する内容も

「承諾書を現状渡せていないので、新規で作成を検討したい」

「現在利用している承諾書の内容で問題ないのか?」  等

法的観点からリスクを予防するためのアドバイスをさせていただきます。

当事務所のサポート内容の詳細についてはこちらをご確認ください。

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