【ざっと見】ペット事業者が知るべき景表法をペット弁護士が解説
先日、ペットビジネスに関連する薬機法規制についてまとめました。
しかし、広告規制は薬機法だけではありません。特に景品表示法に抵触しないかは、配慮する必要があります。
そこで、本記事では、ペットビジネスに関わる人が知っておくべき景品表示法の規制について概要を整理してみたいと思います。
なお、下記で言及する、二重価格表示や、令和5年改正で導入されたステルスマーケティング規制については、詳しく説明する必要があることから、別の記事でまとめて解説させていただく予定です。
1 景品表示法とは
景品表示法は、正式には、「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」といいます。
景表法は、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的」(同法1条)としています。
つまり、消費者は誰もがより良い商品やサービスを求めます。ところが、実際より良く見せかける表示が行われたり、過大な景品付販売が行われると、それらにつられて消費者が実際には質の良くない商品やサービスを買ってしまい不利益を被るおそれがあるから、それを防ぎましょう、そして、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守りましょうということが法律の目的です。
(消費者庁HPhttps://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/#introduction)
大まかな枠組みは以下のとおりです。
消費者庁HPより引用
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/#introduction
2 表示規制
⑴ 概説
表示の内容によって、下記2つの規制を定めています。
ア 優良誤認表示
商品または役務の品質、規格その他の内容についての不当表示
イ 有利誤認表示
商品または役務の価格その他の取引条件についての不当表示
ウ 5条3号指定告示
無果汁清涼飲料水、商品の原産国、不動産等のおとり広告など、類型的に一般消費者に誤認を与え、一般消費者の自主的合理的な選択を阻害する恐れのある表示について、内閣総理大臣の告示指定という形式で規制しています。
本記事では、上記ア及びイについて解説することとし、指定告示は別の機会に言及することとします。
⑵ 優良誤認表示
ア 条文(5条1号)
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
イ ポイント
- 要するに、「実際のものよりものすごく良いものである」と評価されるような表示です。
- 一般消費者が「優良」だと認識するかどうか、が判断基準になります。
⑶ 有利誤認表示
ア 条文(5条2号)
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
イ ポイント
- 要するに、「実際のものよりすごくお得」あるいは「他の会社のものよりすごくお得」と表示しているが実際そうではない表示です。
- 優良誤認表示同様、一般消費者の認識が基準になります。
- 二重価格表示規制について特に注意しておく必要があります。
ウ 二重価格表示について
例えば、「通常価格39,800円のところ、セール期間限定価格19,800円!」といった具合に、実売価格(上記の例のセール価格19,800円)とそれを上回る価格を比較対象価格(上記の例の通常価格39,800円)として併記することを「二重価格表示」といいます。
消費者は、通常、この表示を見れば、「お得!」、つまり「20,000円も安いなら今買っておこう」となりますよね。これが実際、来週も来月も再来月もセール価格のままだったら、「騙された・・セールじゃなきゃ買わなかったのに!」となりますよね。これが、一般消費者の自主的合理的な選択を阻害する、ということです。
また、自分の店の同じ商品の過去の価格だけでなく、
- 同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いて表示を行う場合
- 比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合
も二重価格表示に当たります。
- 価格表示規制については、別途消費者庁のガイドラインが作成されています。
3 景品規制
⑴ 概説
まず「景品類」に当たるかどうかが、「景品類」に当たるとして、下記、懸賞制限告示、総付制限告示のいずれに該当する場合、景品規制の適用があります。
⑵ 景品類
景品表示法第2条第3項において、
ア 顧客を誘引するための手段として
イ 事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む。)に付随して
ウ 取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益
であって、内閣総理大臣が指定するものをいうと定義されています。
さらに、具体例として、「「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公正取引委員会告示第3号)において、法第2条第3項と同様に上記1~3のとおり規定した上で、具体的にどのようなものが「景品類」に当たるかを指定しています。その内容は次のとおりです。
ア 物品及び土地、建物その他の工作物
イ 金銭、金券、預金証書、当せん金付証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券
ウ きょう応(映画、演劇、スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)
エ 便益、労務その他の役務
ただし、正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らしてその取引に係る商品又は役務に付属すると認められる経済上の利益は含みません。
⑶ 懸賞制限告示
例えば、抽せん、クイズに正解した人だけ、〇〇チャレンジで△△点以上獲得した人だけ、といった具合に、提供相手を限定して、景品を提供する場合です。先着順によって貰える人が決まる場合は、「懸賞」に該当しません。
以下のように、取引価額によって、景品の金額が決まります。
消費者庁HPより
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation
⑷ 総付制限告示
上記と違い、購入者全員プレゼント等、懸賞によらないで提供する景品の場合です。
以下のように、景品の限度額が決まっています。
4 まとめ
ざっとまとめましたが、詳細説明してしまうと全体概要がつかめなくなってしまうので、細かい解釈や規制対象の類型はかなり割愛しています。
詳しく知りたい方、実際にマーケティングに関わっていて、具体的な施策を行うときは、下記ガイドライン等を参照いただき、また、弁護士等専門家にご相談ください。
(景品表示法関係のガイドライン一覧)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline
5 最後に
お読みいただいた方はお察しかと思いますが、商品開発やマーケティング等々で手一杯の中すべてのガイドラインをキャッチアップしていくことは不可能です。法務部があるある程度の規模の企業以外の法人、個人事業主の方は、おもわぬ落とし穴にハマらないよう、ご自身の提供するサービスのHP、チラシ、SNS、パッケージ等消費者の目に触れる表示を見直してみましょう。これからサービスや商品を販売していく事業者さまは、早めに、景表法に詳しい弁護士に相談してみてください。
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