【ペットフード事業者必見】ざっくりわかる!ペットフードの表示に関する公正競争規約
ペットフードの製造販売をするにあたっては、成分や品質はもちろん、パッケージや広告の表示についても遵守しなければならない法規制があります。本記事では、ペットフード事業者が知っておかなければならない法規制のひとつとして、景表法に関する業界ルールであるペットフードの表示に関する公正競争規約について、弁護士が解説します。
1 公正競争規約とは
公正競争規約は、不当景品類および不当表示防止法(以下、「景表法」といいます)に基づき、事業者団体が自主的に設定する業界ルールです。
消費者庁長官および公正競争取引委員会の認定を受けているものであり、基本的にはこの規約に基づいて法規制が運用されます。
2 ペットフードの表示に関する公正競争規約とは
ペットフード公正取引協議会が作成した、ペットフードの品質、性能等の表示に関する業界ルールです。
「ペットフードの取引について行う表示に関する事項を定めることにより、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者感の公正な競争を確保することを目的」としています(規約第1条)
3 ペットフードの表示に関する公正競争規約(および施行規則)の概要
⑴ 規制対象(3条)
規制対象は、以下のように、定義規定に示されています。
ア ペットフード(1項)
穀類、いも類、でん粉類、糖類、種実類、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類、油脂類、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、その他の 添加物等を原材料とし、混合機、蒸煮機、成型機、乾燥機、加熱殺菌機、冷凍機等を使 用して製造したもの、又は天日干し等簡易な方法により製造したもので、一般消費者向けに容器に入れられた又は包装されたもので、犬の飲食に供するもの又は猫の飲食に供するもの
→要するに、一般に言うペットフードはすべて対象になる、と考えて差し支えありません。
イ 総合栄養食(2項)
毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフード及び水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたものであって、ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則(以下「施行規則」という。)に定める栄養成分等に関する運用基準を常に満たすもの
(参考商品)
→運用基準は下記(5)にまとめてあります。
ウ 間食(3項)
おやつ、褒美、又はコミュニケーションの手段として、時を選ばず給与することを目的としたもの
→要するにおやつです。しつけや散歩中のご褒美等であげるものですね。
エ 療法食(4項)
栄養成分の量や比率が調節され、特定の疾病又は健康状態にあるペットの栄養学的サポートを目的に、獣医療において獣医師の指導のもとで食事管理に使用されることを意図したもの
(参考商品)
https://www.petgo.jp/lp/vetsone-veterinary-obesity
ウ その多目的食
特定の栄養成分等の調節・補給又は嗜好増進として与えることなどを目的としたものであって、総合栄養食、間食及び療法食以外のもの
⑵ 規制を受ける「表示」とは(3条7項及び施行規則1条2項)
(1) 商品、容器又は包装による広告
(2) 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物、ダイレクトメール、ファクシミリ、電話及び口頭による広告
(3) ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む)
ネオン・サイン、アドバルーンその他これらに類似する物及び陳列又は実演による広告
(4) 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声器による放送を含
む。)、映写、演劇又は電光による広告
(5) 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信
等によるものを含む。)
→要するに、消費者の目に触れるものはすべて表示と考えて差し支えありません。
⑶ 必要な「表示」(4条)
以下事項を、「外部から見やすいところに」「日本語で」「明瞭に」示さなければなりません。
(1) ペットフードの名称
(2) ペットフードの目的
(3) 内容量
(4) 給与方法
(5) 賞味期限
(6) 成分
(7) 原材料名
(8) 原産国名
(9) 事業者の氏名又は名称及び住所
⑷ 特定用語の使用基準(8条及び規則7条)
以下の用語を使うときはそれぞれ施行規則に定める基準を満たさなければなりません。
(1) 特定の栄養成分の含有の有無又は量の多寡(「高」、「豊富」、「含む」、「強化」、「ゼロ」、「低」、「減」等)の用語(規則7条1項)
ア 当該商品と同種の商品に比べてどのくらい差があるか、数値をもって具体的に記載する場合
イ 客観的な数値基準をもってその根拠を説明できるものであって、かつ、その根拠を記載する場合
例)低脂肪(当社他製品比 30%減)
(2) 「推奨」又はこれに類する用語(規則7条2項)
ア 一般的又は関連事業分野の専門家多数により認められた方法による試験・調査によって得られた結果
イ 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献であって、一般に認められているもの
例)獣医が勧めるドッグフード(当製品を使用した獣医師〇〇名のうち90%が「うちのコにも食べさせたい」「とてもいい製品だと思う」と回答しました)
(3) 「受賞」又はこれに類する用語(規則7条3項)
それを受けた時期及び授賞者の氏名又は名称を記載する
(4) 「無添加」、「不使用」又はこれらに類似する用語(規則7条4項)
無添加である原材料名等が明確に併記され、かつ、当該原材料につき、次のア又はイの基準を満たす場合に限り、表示することができる。
ア 添加物以外の原材料に係る表示については、ペットフードの全ての製造工程において当該原材料が使用されていないことが確認できる場合
イ 添加物に係る表示については、当該添加物につき、ペットフードの表示のための添加物便覧に記載された添加物(加工助剤、キャリーオーバー及び栄養強化目的で使用されるものを含む。)を一切使用していないことが確認できる場合
→何が無添加であるのか、原材料名や添加物名を併記しなくてはなりません。
→「一切使用していません」「〇〇などは不使用」など、併記をしていないもしくは併記しているもの以外も不使用であることを示唆する表現はできません。
(5) 「ナチュラル」、「ネーチャー」又はこれに類似する用語(規則7条5項)
化学的合成物及び着色料を使用していないものに限り、表示することができる。ただし、総合栄養食、療法食及び総合栄養食基準を満たす旨を表示する間食については、栄養バランス上欠かせないビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類のみに化学的合成物を使用しているもので、以下の各条件を満たす場合に限り、表示することができる。
ア 栄養バランス上欠かせないビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類のみに化学的合成物を使用している旨を、「ナチュラル」等に関する最も目立つ表示に、その表示の4分の1以上のフォントサイズで明瞭に併記していること。ただし、内容量500グラム以下の小型容器については6ポイント、500グラムを超えるものについては8ポイントを下回らないこととする。
イ 油脂の酸化防止に、エトキシキン、BHA、BHT等の合成の酸化防止剤を使用していないこと。
例)ナチュラル○○○
ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類のみ合成のものを使用しています
(ナチュラル表示の高さ、幅各々の4分の1以上の大きさで表示する)
注)着色料は天然由来でも使用不可
製品全体を「天然」「自然」などと表示することはできません。
合成ビタミンを酸化防止剤として使用した場合は、打消表示をしてもナチュラル等の表示はできません。
⑸ その他の表示基準
ア 総合栄養食の表示基準(5条)
以下の事項を表示しなければなりません。
(1) ペットフードが適用される犬又は猫の成長段階
(2) 「総合栄養食」である旨の表示
上記は、施行規則により詳細が定められています。
(6)不当表示の禁止(10条及び規則8条)
ア 規約10条
(1) 第3条第1項から第5項までに規定する定義に合致しない内容の商品について、それぞれ定義に合致する商品かのように誤認されるおそれがある表示
(2) 第7条に規定する特定事項の表示基準又は第8条に規定する特定用語の使用基準に
合致しない表示
(3) 客観的根拠に基づかない、特選、特級等の表示
(4) 他の事業者又はその製品を中傷し、又は誹謗する表示
(5) 原産国について誤認されるおそれがある表示
(6) ペットフードの成分、原材料又は製造方法について、実際のもの又は自己と競争関係
にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると誤認されるおそれがある表示
(7) 賞を受けた事実又は推奨を受けた事実がないにもかかわらず、賞又は推奨を受けたと
誤認されるおそれがある表示
(8) 内容物の保護、品質保全又は製造技術上必要な限度を超えて著しく過大な容器包装
を用いること。
(9) 前各号に掲げるもののほか、商品の内容又は取引条件について、実際のもの又は自己
と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に
誤認されるおそれがある表示
イ 規則8条
(1) 規約第10条第6号関係
ア 抗生物質など、ペットフードには通常使用されない原材料や添加物等について
不使用、無添加である旨を強調することで、品質等が優れているかのように誤認
されるおそれがある表示
イ 客観的根拠に基づかない「天然」、「自然」等の表示
(2) 規約第10条第9号関係
ア AAFCO(又はNRC)認定、承認、合格等、証明機関でないのに当該機関
が自ら行う検査に合格したかのように誤認されるおそれがある表示
イ 「完全栄養食」、「総合完全栄養食」等の表示
ウ 製品全体を指した「新鮮」、「フレッシュ」、「生」又はこれらに類似する表
示
(3) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)に基づく動物用医薬品の効能効果若しくはこれらと同様な効能効果を標榜し、
又は暗示する表示
(7)罰則(15条)
ア 警告(15条1項)
イ 100万円以下の違約金または除名処分(15条2項)
4 まとめ
上記の通り、ペットフードの表示に関する公正競争規約は、やや複雑で施行規則まで含めると、自社製品が表示ルールを遵守できているかどうか、製造販売事業者が自社でチェックするのはかなり大変です。社内で規約に精通している担当者がいらっしゃらない事業者様は、すぐに、ペットフードの法規制に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
弊所は、全国でも珍しいペット事業者支援に注力している法律事務所です。全国対応可能ですので、ペットフードをこれから製造販売しようとしている事業者様や、すでに製造販売している企業様で、広告やパッケージの表示を見直したいとお考えの事業者様は、お気軽にお問い合わせください。
(参考)
・https://pffta.org/kiyaku.html
・ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則解説書(ペットフード公正競争協議会)