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【ペット弁護士®が解説】ペット事業者が押さえておくべき薬機法のルールまとめ

ペット関連商品と薬機法規制

1 はじめに

ペットフードやサプリメントに関する薬機法規制については、以前こちらのコラムで簡単にご紹介しました。

しかし、コンパクトにしすぎてしまったため、実際にペットフード、サプリメント、シャンプー、デンタルグッズ等々、薬機法の関連するペット商品を製造販売する方が参考にするには物足りない内容だったかな、と思います。

そこで、本記事では、各種農水省通知やガイドラインを実際に引用しながら、どこまで表記できて、どこから先がNGなのか、詳しく説明していきたいと思います。

今回引用しているのは、下記資料になります。

①農水省通知「動物用医薬品等の範囲に関する基準」平成26年11月25日通知(以下、「平成26年通知」といいます)
②平成25年9月11日 農水省通知 「ペットフードにおける医薬品的な表示について」(以下、「平成25年通知」といいます)
③ペットフード等の薬事に関する適切な表記のガイドライン(ペットフード公正取引協議会。以下「ガイドライン」といいます)

2 平成26年通知の基本的な考え方

 動物用医薬品等に該当するか否かについては、「動物用医薬品等の範囲に関する基準について」(平成26年11月25日26消安4121号農林水産省消費・安全局長通知)の中で定められています。

⑴ 動物用医薬品等に当たるかどうかは、その物の成分、形状(剤型、容器、包装、意匠等)、表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において同条第1項第2号若しくは第3号又は同条第2項に掲げる目的を有していると認められる物かどうかによって判断されます。

 そのため、「医薬品でない」旨表示したからと言って動物用医薬品ではないことにはなりません。

⑵ 「成分」

 使っている成分本質(原材料)のことをいいます。

 成分が動物用医薬品に当たるものかどうかは、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リストを確認する必要があります。

https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/a7d2f0aaf67821edb8804a6ec9b82e95.pdf

 また、通知では、「その物の成分だけではなく、起源、製法等についての表示、販売時の説明、広告等の内容も考慮して判断する。したがって、その物に実際に配合又は含有されていない成分であっても、配合又は含有されている旨を標ぼうしている場合には、当該成分が配合又は含有されているものとみなす。」とされています。よって、実際に使っていない医いなくても、当該医薬品的成分を含む旨表記してしまうと、動物用医薬品に当たると判断されてしまう、ということになります。

 ⑶ 形状

  パッケージや当該薬品そのものの形が医薬品的であってはいけないということです。

 通知では、「錠剤、丸剤、カプセル剤又はアンプル剤等の剤型は、一般に医薬品等に用いられており、これらの剤型とする必要のあるものは医薬品的性格を有すると一般に認識されている。また、その容器又は被包の意匠又は形態が市販されている医薬品等と同じ印象を与える場合も、通常人は、その物を医薬品等と混同するものと考えられる。このため、その物の形状が上記のような形状を有する場合は、原則として医薬品的な形状であると判断する」とされています。

 ⑷ 表示

  パッケージ等で、医薬品的な効能効果を表示してはならないということです。

 通知では、「表示」とは、その物の容器、包装、添付文書、チラシ、パンフレット、刊行物、インターネット等の記載を言うとされています。

 また、当該表示において、下記4点に該当する場合は、医薬品的な表記と判断するとされています。

 ア 主に動物の疾病の診断、治療、予防に使用されることが目的と判断される場合

  例)「診断」「治療」「予防」「〇〇病」

 イ 主に動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的と判断される場合

  例)「〇〇の改善」「増強」「〇〇の健康増進をサポート」

 ウ 主に、医薬部外品の効能効果と判断される表示がある場合

  例)体臭防止、害虫の防除

 エ 医薬品であることを暗示させる表示がある場合

  例)獣医師、学者等の専門家の発言や新聞、雑誌、学術論文等から引用した記事、試験データ、経験談等

 ⑸ 用法容量

 ア 通知では、「食後」、「食間」、「投与」、「服用」など、消費者に医薬品等の用法用量と誤認  させると考えられる記載がある場合には、原則として医薬品的な用法用量を表示しているものと判断するとされています。

   例)「食前に1錠を服用する」、「食間に2包を投与する」等

 イ 他方、医薬品的と誤認しない形で、適切な給与方法を明示することは可能です。

   例):「1日1回1粒を目安に与える」、「体重○○ kg 以上○○ kg 以下 2~3粒」

3 平成25年通知

平成25年9月11日農水省通知では、医薬品的表示の該当性の判断の参考とするペットフードやペット用サプリメント等に関する具体例を示しています。

 こちらに関しては、わかりやすくOK例とNG例が示されていますので、実際に販促物を作る際は、随時参照してください。

https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/y_import/pdf/pet_k_tuti.pdf

 参考までに、OK表記とNG表記をそれぞれ一部引用します。

 ⑴ OK表現

  • 〇〇(特定部位)への〇〇(栄養成分)補給
  • 補給による健康維持
  • 健康維持のために〇〇配合
  • 肥満で負担がかかる関節の健康維持のために〇〇を配合
  • 皮膚の健康のために〇〇配合
  • 〇〇は皮膚、毛並みを健康に保ちます
  • 健康な皮膚と輝く毛並みを維持します
  • 〇〇が〇〇(特定部位)の健康に貢献
  • 〇〇の補給により善玉菌が増加し、糞の臭いが軽減します
  • 〇〇が腸内の水分や臭いを吸着することで尿臭が軽減されます
  • 関節の健康をサポート、健康な皮膚をサポート

⑵ NG表現

  • 健康な皮膚と輝く毛並みを約束します(改善を暗示)
  • 健康にしてくれます
  • 免疫、抵抗力、体力を増強
  • ビタミン◯は、◯◯の機能維持を助けます(機能への影響を標ぼう)
  • 〇〇機能をサポートする〇〇を配合(具体的作用を標ぼう)
  • 疾病名や身体の機能をサポートと言う表現は、改善、増強の暗示になるので、NG

4 ペットフード等の薬事に関する適切な表記のガイドライン

ペットフード公正取引協議会が作成した「ペットフード等の薬事に関する適切な表記のガイドライン」です。(https://pffta.org/pdf/guidelines5.pdf)

 同ガイドラインは、薬機法上問題となるペットフード等の容器や広告媒体について、上記2の平成26年通知および上記3の平成25年通知が農水省から発せられているところ、「これら通知の理解を深め、ペットフード等に関する適正な表記がなされるよう、農林水産省の指導の下、本ガイドラインを作成しました。本ガイドラインは、ペットフード等の表記のうち、特に医薬品医療機器等法上問題となるか否か判断の難しい表記について解説を行うものである」と述べています。

 ガイドラインでは、医薬品的な表記と判断される場合、判断されない場合について、それぞれ複数の類型に整理されています。

 また、それぞれの類型について、適切な表記の事例を、別途「ペットフード等の薬事に関する適切な表記の事例集」にまとめられています。(https://pffta.org/pdf/jirei2.pdf


(医薬品的な表記と判断される場合)

  1. 病名・症状・疾病の原因または好ましくない語句(本コラムでは「ネガティブ表現」と表記します)で修飾されている身体の構造・機能
  2. 身体の構造・機能に影響を及ぼす旨の表記

 (例)

  • 腎臓疾患の愛犬に
  • 貧血気味の犬に
  • 涙やけが気になる愛犬に
  • 気になる体臭に
  • 「殺菌・減菌」も原則として使用NG
  • 〇〇成分がストレス解消
  • フリーラジカルの抑制
  • 悪玉コレステロールを減らします
  • 皮膚の乾燥
  • 弱りがちな関節に配慮
  • 老化予防に

(医薬品的な表記と判断されない場合)

  ペットフードの本来の目的(栄養成分の補給または物理的特徴・作用によるペットの健康維持)から逸脱しない場合、医薬品的な表記とは判断されません。具体的には以下の3類型のいずれかに該当する場合は、医薬品的表記と判断されません。

  1. ネガティブ表現で修飾されている身体の構造・機能に影響を及ぼす表記であっても、妥当な説明があり、直ちに医薬品的な表記と判断されない場合
  2. 体格、年齢、品種の特徴に起因する旨の妥当な説明がされている②健康維持または健康と明記され健康維持の範囲内と判断できる、身体の構造・機能の状態に関する表記は、医薬品的な表記と判断されない
  3. ネガティブ表現で修飾されていない身体の構造・機能のみを表記する場合は、医薬品的な表記と判断されない
  • 免疫力・抵抗力

健康維持によるという表記が明記されている又はバランスのよい栄養成分によりペットの健康が維持されるとの妥当な説明が明記されている場合に限り、「免疫(力)」「抵抗力」を表記できます。

なお、「免疫(力)」「抵抗力」に対して使用できる表記は「保つ」「維持」、これらの同意語であり、改善・増強を意味する表記はできません

例)健康を維持することにより免疫力を保ちます。

優れた栄養バランスにより(健康を維持し)抵抗力を保ちます。

  • 食物アレルギー

アレルゲンを含まない又はペプチド処理等のアレルゲンとなりにくい処理を施したとの妥当な説明が明記されている場合に限り、「食物アレルギー」を表記できます。

なお、「食物アレルギー」に対して使用できる表記は「対応、管理、配慮(ケア)」、これらの同意語であり、改善・予防を意味する表記はできません。

例):卵アレルギーに敏感な愛犬に配慮して卵を使用していません。

  • 歯石、歯垢、口臭

口腔内で消化されやすい又は噛むことによるとの妥当な説明が明記されている場合(口臭については、着香等によるとの説明も可)に限り、「歯垢」「歯石」「口臭」を表記できます。

なお、「歯垢」「歯石」「口臭」に対して「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記を使用できます。

例):噛むことにより、歯垢の沈着を抑えます(軽減します)。

噛むことにより、歯垢の沈着を抑え、口臭を軽減します。

  • ストレス・リラックス

噛むことや遊んだりすることによるとの妥当な説明が明記されている場合に限り、「ストレス」を表記できます。

なお、「ストレス」に対して「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記を使用できます。

「リラックス」は「ストレス解消(軽減)」の類似表現と解釈されるため、噛むことや遊んだりすることによるとの妥当な説明が明記されている場合に限り表記できます。

例)噛んだり遊んだりすることでストレス解消(軽減)になります。

  • 糞尿臭

着香や臭いの吸着による餌や腸内容物への物理的作用について、妥当な説明が明記されている場合に限り、糞尿臭に関する表記ができます。

なお、糞尿臭に対して「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記を使用できます。

例)腸内容物の臭いを吸着することにより、糞の臭いを抑えます。

消化が良く糞量が減ることで、糞の臭いを抑えます。

  • 毛玉

食物繊維による物理的作用について、妥当な説明が明記されている場合に限り、「毛玉」を表記できます。

なお、「毛玉」に対して「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記を使用できます。

例)食物繊維が毛玉を絡め取ることにより、毛玉の形成を抑えます

  • 食欲

風味又は製品自体の嗜好性に関する物理的特徴について、妥当な説明が明記されている場合に限り、食欲のない状態に関する表記ができます。

ただし、食欲のない状態に対して使用できる表記は、「対応、管理、配慮、気になる」、これらの同義語であり、改善・予防を意味する表記はできません。

例)食欲がない愛犬に配慮して、○○風味で嗜好性を高めています。

  • 体重管理

カロリー、脂肪又は食物繊維に関する物理的特徴について妥当な説明が明記されている場合に限り、体重管理に関する表記ができます。ただし、体重管理に対して使用できる表記は、「対応、管理、配慮、気になる」、これらの同義語であり、改善・予防を意味する表記はできません。

なお、低カロリー、低脂肪等、体重減少につながる妥当な物理的特徴が明記されている場合に限り、「減少」等の一定の改善の表記ができます。

※「肥満」は、病名・症状に類する表記ではなく、体重管理と同等の表記ができます。ただし、肥満症は「症」があるため病名と判断されます。

例)体重過多な愛犬に配慮して、低カロリーに仕上げました。

  • 咀嚼機能

形状又は硬さに関する物理的特徴について、妥当な説明が明記されている場合に限り、咀嚼機能が弱い状態に関する表記ができます。

ただし、咀嚼機能が弱い状態に対して使用できる表記は「対応、管理、配慮、気になる」、これらの同義語であり、改善・予防を意味する表記はできません。

例)あごが弱い愛犬に配慮して、柔らかく食べやすくしました。

  • 消化機能

優れた消化性に関する物理的特徴について、妥当な説明が明記されている場合に限り、消化機能が弱い状態、便質に関する表記ができます。

ただし、消化機能が弱い状態に対して使用できる表記は、「対応、管理、配慮、気になる」、これらの同義語であり、改善・予防を意味する表記はできません。

なお、消化機能は身体の機能そのものであることに対し、便質は排泄物の状態を示す表記であり、身体の構造・機能を示すものではないため、便質に対して「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記を使用できます。

また、「腸内環境」「腸内」は、身体の構造である消化管壁も含むと判断されるため、「腸内環境」「腸内」に対する表記は、健康維持の範囲内でなければ使用できません。

一方、「腸内容物」「腸内細菌(叢)」は、身体の構造ではないため、「腸内容物」「腸内細菌(叢)」に対する表記は、その内容に関わらず、医薬品的な表記と判断されません。ただし、「悪玉菌」等は、疾病の原因と判断されるため、使用できません。

例)お腹の弱い愛犬に配慮して、消化吸収に優れた原材料を使用したフー

ドです。豊富な食物繊維による良質な消化性により、便が柔らかくなるのを防ぎます。

  • 食事の吐き戻しの軽減

ペットフードの物理的な特徴について妥当な説明が明記されている場合に限り(例えば、食物繊維により粒の吸水が早く、すばやくふやけて胃やお腹の中で崩れやすいなど)、ペットが摂取したペットフードの吐き戻しを防ぐ表記ができます。

ただし、病気に由来する嘔吐や吐き気への効果があるような誤認を起こさないように表記には配慮する必要があります。

例)フードに配合される食物繊維により、粒への吸水が早く、お腹で崩れ

やすいことにより、食事の吐き戻し*を軽減します。

5 医薬品的な表記と判断されないために必要なその他記載事項

ガイドラインでは、効能効果についての表現以外の記載事項についても説明しています。

  • 消費者が最も容易に認識できる箇所に表記する必要があります。
    • 同一視野内
    • 文字サイズ・フォント
    • 色調
  • 試験データ・学術データ・消費者アンケートのデータは、医薬品的効果を暗示することが多いので、下記のいずれかに該当する場合を除き、表示できません。
    • 学会で開示する場合
    • 獣医師、フード関連事業者の要請に基づき当該要請者に対して開示する場合
  • 接触前後を比較した写真、イラストは、身体の構造・機能に影響を与えることが暗示されるため、下記のいずれも満たす場合を除き、表示できません。
    • 物理的特徴等の妥当な説明を明記している
    • 病気の予防改善を標榜していると誤認されない

6 最後に

 薬機法は、通達やガイドラインの改正や、直近の公表事例などタイムリーにキャッチアップしていかないと思わぬ落とし穴にはまってしまう法規制です。

 事業者は,消費者の信頼を裏切ることのないよう、また、コンプライアンスに抵触することなくビジネスを成長させるため、最新の法規制に適応していかなければなりません。いつでも相談でき、薬機法に違反しない表現を考えてくれる、御社のビジネスと薬機法に詳しい弁護士を見つけておくことが重要です。

 弊所では、ペット関連商品の薬機法規制に詳しいペット弁護士®が、顧問契約を通じて法改正への適応を含めてトータルサポートが可能です。薬機法チェックが月3件以上ある事業者様には月額5万5000円でチェック依頼し放題の薬機法顧問プランをおすすめしております。詳細を知りたい方は下記詳細をご確認ください。

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