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ペット弁護士が解説 動物病院向けクレームへの対応方法と防止策について

昨今のペット市場の変化,ペットブーム,権利意識の高まり等様々な事情があり,動物病院でも,獣医師や看護師が,飼主からのクレームの相談が増加傾向にあります。

獣医師又は看護師が,飼い主様からのクレームで精神的ダメージを負い,休職・退職を余儀なくされることは,当該スタッフのみならず,他のスタッフにしわ寄せがいき,結果,院内のマネジメント全体に甚大な影響を与えてしまいます。

つまり,動物病院経営において,クレーム対応は,極めて重要な課題である,と考えます。

そこで,本記事では,動物病院におけるクレーム対応と防止策について,解説したいとおもいます。なお,本記事では,動物病院の顧客である飼主及びその飼い犬をまとめて「患者」と呼称することとします。

目次

  1. 1.クレームの定義
  2. 2.クレームの種類
  3. 3.クレームに対する法的措置
  4. 4.クレーム対応の基本的な考え方
  5. 5.クレーム予防にはマニュアル作成
  6. 6.院内での対応が難しければ無理せず弁護士に相談しましょう

1 クレームの定義

 

 「クレーム」とはそもそもなんでしょうか。「手術の説明が足りない」「親身になって診てくれない」「予約が入りにくい」「会計が遅い」等々,患者からの不平・不満が全てクレームか,と言えば,もちろんそんなことはありません。

 病院側が改善すべき点をお客様である患者が教えてくれるわけですから,真摯に受け止めることで,提供する獣医療サービスの品質を向上できる,貴重なチャンスと言えます。患者からの貴重な意見を「どうせクレームでしょ」「クレームだから放っておこう」と安易に決めつけないことが重要です。

 端的に言えば,真っ当な要求は貴重なご意見ですし,度が過ぎた要求はクレーム,ということです。

本記事では,「社会的相当性を逸脱した内容及び方法で何らかの要求をしてくる者」をクレーマーと定義することとし,以下説明していきます。

2 クレームの種類

 大きく分けると,クレームは以下の3つに整理することができます。

⑴ サービス(診療そのもの)に対するクレーム

⑵ 獣医師・スタッフと飼い主さんとの間のコミュニケーションに関するクレーム

⑶ ⑴⑵或いはその他の事柄についての思い込み・勘違いによるクレーム

 まず,クレームが⑴⑵⑶どれに該当するのか,整理して考えることが重要です。

3 クレームに対する法的措置

(1) 民事

①仮処分手続

 たとえば,クレーマーに対して,押し掛けたり電話を繰り返す等の迷惑行為を止めてほしいといった(「面談強要禁止」等)申立を裁判所にすることができます。正式な裁判をするのは時間がかかります。その間に病院に損害や危険が生じ,あとで取り返しがつかない,といったケースの為に認められている手続きです。

②損害賠償請求

 クレーマーの行為により病院に損害が生じた場合は,損害賠償請求訴訟を提起することが可能です。

③債務不存在確認訴訟

 クレーマーが,金を払え,謝罪しろなどの病院側に義務がない理不尽な要求を繰り返し,止まない場合,そのような義務がないことを裁判所に確認してもらう訴訟を提起することができます。これを債務不存在確認訴訟と言います。

(2) 刑事

 具体的な言動によっては、恐喝(刑法249条),脅迫(刑法222条)、強要(刑法223条),業務妨害(刑法233条,234条)、例えば,お引き取り願っても院内に居座り出ていかない場合は不退去罪(刑法130条)などの犯罪が成立する可能性があります。

 悪質なクレーマーには、被害届、告訴など刑事処分を求めるアクションも効果的でしょう。

4 クレーム対応の基本的な考え方

⑴ 「悪質クレーマーは患者ではない」と心得る

 ①一人のクレーマー対応に過剰なマンパワーを取られる→②他の患者様の対応が回らなくなる→③院長,スタッフの心労がたまる→④退職・休職者が出る(②に戻る。以下ループ)・・・このような事態は考えただけでも恐ろしいですね。

 このような負のループを避けるために,動物病院におけるクレーマー対応で最も大事な心構えは,「クレーマーはもはや患者ではない」と決意することです。「クレーマーは患者ではない」いう明確な方針を院長自身が確立し,全スタッフに共通認識として浸透させることがクレーマー対策の第一歩です。明確な方針も立てずに,クレーム対応を担当者に丸投げすることだけは絶対NGです。担当者がつぶれてしまいます。

 不当要求には屈しない,クレーマーは患者ではないものとして対応する統一した方針を確立して,組織的なクレーマー対策を行いましょう。あいまいな態度でお茶を濁すより,できないことはできないと毅然とした態度で伝えましょう。結果的にトラブルの早期解決につながります。

⑵ 初期対応が大事「まずは聴く」

 まずは聞きましょう。不満を全て吐き出させる,要求を正確に把握する,特に5w1hを意識して正確に聞き取りましょう。患者を安易にクレーマーと決めつけてはいけません。また,初期対応では,焦って具体的な回答をしないように気を付けましょう。早急な対応を求められても、「回答は差し控えさせていただきたい。正確な判断を行うためにもご理解ください」といった趣旨の回答にとどめましょう。経験上,言いたいことを全て吐き出すとすっきりするのか,それ以上何も言わずに帰っていくということは,意外に多いものです。

⑶ 「でも」「しかし」は禁句 

 人の怒りを鎮めるには,耳を傾け,共感している姿勢が大事です。「でも」「しかし」など,言い訳に聞こえるようなワードはNGです。「なるほど」「それは仰る通りでございます」など,同調するような言葉を使うように心がけましょう。

⑷ 反論,議論はNG

 クレーム対応の目的は,「自分たちが正しい」ことを明らかにすることではありません。患者さんの怒りを鎮めてお引き取り頂くのが目的。反論したり議論をふっかけたりして,患者さんを否定したり打ち負かしたりしてはいけません。「自分たちが悪いわけではない」という局面は極めて多いと思いますが,一旦「我こそ正義」というマインドは捨てましょう。

 クレーム対応時は,自分が会社を代表していると思え

 受付のスタッフ,電話口のスタッフとしては,「自分のせいじゃないのに・・」と考えてしまうことは致し方ありません。

 しかし,「じぶんのせいじゃない」という態度が発言の節々や態度から患者に伝わることで患者がクレーマー化してしまうことがあります。内心そう思っていたとしても,態度に出してはいけません。自分が病院を代表して対応しているというマインドセットで真摯に対応することを心がけましょう。

⑹ 良いクレームはビジネスチャンスと心得よ

 もし自分が飼主として,担当者が聞く耳を持ってくれず敵意が感じられる対応をされたら,当然不快な思いをするでしょうし,同じように敵対的な態度を取ってしまうこともあるでしょう。クレーマーは患者ではないと思え,と言いましたが,患者さんからの意見を全て面倒なクレームとして片づけてはいけません。まずは,飼い主さんの意見として,フラットに傾聴しましょう。

 「良いクレーム」を真摯に受け止め,改善に努めることは,よりよいクリニックを作ることに繋がります。「良いクレーム」は,ビジネスチャンスと心得ましょう。

 

5 クレーム予防にはマニュアル作成

 

 多忙を極める動物病院経営者は,クレーマー対応を現場に丸投げしがちです。「なんとかうまくやっておいて」と言ってしまったことはありませんか?丸投げほど現場を苦しめることはありません。

 クレーマー対応を,たまたま応対したスタッフに任せてしまう,クレーム対応が上手そうなスタッフに属人的に任せてしまうことは絶対NGです。そのスタッフさんを心身ともに疲弊させるだけ。

 クレーム対応は「仕組みづくり」「対応の統一化」がキモになります。マニュアルがあることで誰が対応しても一定レベルの対応ができますし,何より,現場スタッフを「自分で判断しないといけない」プレッシャーから解放することができます。実際は,以下のようなフローで仕組みづくりを進めていきます。

⑴ 意識改革

何より院長の意識改革が重要です。「悪質クレーマーは客(患者)ではない」というマインドセットの浸透とクレーム対応には組織的な対応が必要不可欠であるという共通認識を院内に徹底させましょう。悪質クレームから獣医・スタッフを守ることを宣言してください。

⑵ 情報の共有

 実際にクレームを受けた際は,その内容を院内で共有しましょう。その上で,組織としていかなる対応をすべきか,獣医・スタッフ全員で検討しましょう。

⑶ マニュアル化

 意識改革と情報共有ができたら,これを踏まえて,クレーム類型ごとのクリニックとしての対応方法やプロセスを構築していきましょう。

 いきなり完璧なマニュアルができることはありません。日々の業務を行いながら,患者さんから頂くご意見を踏まえてマニュアルを随時ブラッシュアップしていきます。マニュアルを作る際は,「おススメフレーズ」や「NGフレーズ」などできるだけ具体的な対応まで掘り下げること,そして具体的な対応を周知訓練することが大事です。必要に応じて外部講師を招いて研修などを行うとより効果的でしょう。

6 院内での対応が難しければ無理せず弁護士に相談しましょう

 多くのクレームは,「今後のご連絡は我々が窓口となりますので,弊所までご連絡ください」等と記載した弁護士からの受任通知を送付することで,収束します

 悪質なクレーマーの対応は,ストレスを抱える前にすぐ弁護士に交渉窓口を移管することが最大の対策なのです。「何かあったら○○先生に頼めばいい」という安心感は,日々の業務における獣医師・スタッフの精神的支えとなります

 すぐに相談できる弁護士・法律事務所とうまく連携することがクレーム対策として極めて有効といえるでしょう。

  当事務所では、クレーム対策のサポートのみならず、顧問契約でのトータルサポートも可能です。ぜひ顧問弁護士の活用をご検討ください。

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