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ペット弁護士が解説 ペットホテルで起きるトラブルと法的な対処法 

 多くのペットホテルはお預かりする犬猫ちゃんを愛情持って丁寧に飼育管理されておられます。しかし,生き物ですから,どうしてもトラブルが起きてしまうことがあります。

 今回は,ペットホテルで起きるよくあるトラブルや実際にあった裁判例,ペットホテル側としてどのような対策をしておくとトラブルを回避できるのか,ということをお話していきたいと思います。

目次

1 ペットホテルでよくあるトラブル

2 実際にあった裁判例

3 ペットホテルがやるべきトラブル回避策

4 まとめ

1 ペットホテルでよくあるトラブル

⑴   保管中のペットが逃げ出してしまった

 たまたまあいていた窓,他のお客様やスタッフが出入りして開いていたドアから,一瞬のスキをねらって,ペットが脱走してしまう,ということが稀にあります。

 また,ワンちゃんの場合,ペットホテル宿泊中のお散歩の際にリードが外れるなどして逃走し行方不明になってしまう,ということもあります。

⑵ 保管中にペットを怪我・死亡させてしまう

 ペットホテル宿泊中のトリミングの際に,ハサミでペットを傷つけてしまったり,施術台からペットが飛び降りしてしまい骨折したり,保管中の他の犬猫とケンカして怪我してしまったり,することがあります。

 また,宿泊中に何らかの原因で,突然具合が悪くなり,動物病院に連れていかないといけなくなってしまったり,稀にそのまま死亡してしまう,ということもあります。

 大切なペットを預かった時と同じ健康な状態のまま飼主さんに返還することは,ペットホテルの基本的な義務です。さらに言えば,ペットホテルは「業として」ペットを預かっていることから,一般の飼い主より高度な注意義務を負うと考えられています。

 したがって,万が一でもお預かりしているペットを飼主にお返しできない事態が生じないよう,最大限の注意を尽くしておくべき,といえるでしょう。

 実際,上に述べたようなトラブルがあった事案において,ペットホテルの過失及び損害賠償責任を認めた裁判例があります。以下,裁判例を紹介します。

2 実際にあった裁判例

⑴ ペットホテル宿泊中に逃走し,行方不明になった事例(福岡地裁H21.1.22)

【事案】

 チワワ(以下,「本件犬」といいます)を飼っていたAさんがBホテルに,本件犬を宿泊させた。Aさんは,預ける際,Bのスタッフに「他の犬を怖がるので一緒にしないでほしい」と注意書きを記載したメモを渡した。しかしBスタッフが,これを忘れ,他の犬と一緒に,散歩に連れていってしまい,本件犬が散歩中に暴れ,首輪が外れ,行方不明になった。Bのスタッフは,Aの電話での問い合わせに対し,行方不明になったことを直ちに伝えず,また捜索をしていないのに捜索をしたと虚偽の説明をするなど不誠実な対応をとった

【判例要旨】

① 他の犬と一緒にしないように指示があったにもかかわらず,これに反したことにつき, Bの過失を認めた。

② Aの本件犬に対する愛着は特に強いものであったこと,Bの従業員の事後の対応が真摯なものと言えなかったこと,ペットを預かることを業としているものであることを考慮し,60万円の損害賠償を命じた

⑵ ペットホテルに預けた犬が骨折した事例(青梅簡裁H15.3.18)

【事案】

Cは飼育していたミニチュアダックスフンド(以下,「本件犬」といいます)をDホテルに預けた。預けたときは異常がなかったが,受け取りに行くと,右足を地面につけることができず,3足歩行をするになっていた。当日,Dホテルの紹介で診察を受けた病院では打撲と診断されたが,症状が改善しなかったので,数日後にCが他の病院に連れていったところ,右前足骨折,しかも,最近のものである,と診断された。

【判例要旨】

①本件犬の骨折時期は,Dホテルが本件犬を預かっていた間であると推認でき,ペットホテルは,犬を預かることを営業としており,その業務に関しては,一般人よりも高度の注意義務を負っていると認められる。Dホテルは,注意義務を怠ったとの事実が推認でき,骨折についての責任を負う。

② 治療費等として7万1600円,慰謝料3万円を認定した

3 ペットホテルがやるべきトラブル回避策

⑴ 物理的な対策

 まずは,物理的な措置をちゃんとしましょう。例えば,

 ア 窓はちゃんと閉めて鍵を掛ける

 イ 二重ドアにする

 ウ 散歩させるときはリードのチェックを怠らない

 エ ペット同士が接触する状況では必ずスタッフの目が届くようにする

 といった基本的な対応を怠らないようにしましょう。

⑵ 契約書・確認書をちゃんと作る

 

 上記のようなトラブルの中には,「預かった時すでに,ペットの体調が悪かったとか,既に怪我をしていた」ということもしばしばあります。その場合,ペットホテルに落ち度がないわけですから,ホテル側としては責任を否定して争う,ということになるわけですが,その際,預かった時のペットの健康状態を契約書や確認書,同意書等の書類で飼主さんに確認してもらい,ちゃんと証拠化できているかがポイントになります

 また,あくまでペットホテルが責任を負うのは,ホテル側に過失がある場合に限ることや,ホテル側が何らかの責任を負う場合も,損害賠償の範囲は,相当な範囲に限られること,などを契約書等で明記することで,トラブルを避けることも可能になります。

 ペットホテル経営者の多くは,多忙ですし,契約書なんかは,チラシとかHPと違って売上に直結しない空後回しになりがち。「法律のことは難しくてよくわからないし,ネットで見つけたひな形使えばいいや!」となりがちです。

 法律の専門家である弁護士の作成した契約書を,自らを守る盾として用意しておくと,何かあった時に安心といえるでしょう。ペット事業者さんが弁護士を活用すべき理由について別のコラムでまとめていますので,よろしければご参照ください。

⑶ 保管状況を記録する

 宿泊時・保管時にホテル側に過失がないと主張するには,ビデオやカルテなど保管時の状況を記録しておくことが有用です。

⑷ かかりつけの動物病院や相談できる弁護士を見つけておく

 万が一お預かりしているペットに異変が生じた際は,飼主さんに連絡を取ることはもちろん。可及的速やかに動物病院で診療してもらうことが大事です。かかりつけの動物病院さんを確保しておきましょう。

 同様に,トラブルがあった際は,まずは弁護士に相談して,適切な対応を検討しましょう。

 

4 まとめ

 

 ペットホテルの多くは,動物病院と提携していらっしゃるかと思いますが,すぐに相談できる弁護士がいるというペットホテル経営者の方はおそらく殆どいらっしゃらないかと思います。

 しかし,これまでお話させて頂いたように,そもそもトラブルを無くすには,飼主さんと取り交わす諸々の書類をちゃんと作ることが大事です。また,起きてしまったトラブルを速やかに鎮静化するには,トラブルの初期段階で法的紛争も視野に入れた適切な対応をすることがひいてはホテル及びスタッフを守ることに繋がります。

 すぐに相談できる弁護士・法律事務所とうまく連携することがトラブル対策として極めて有効といえるでしょう。

  当事務所では、契約書の作成・チェックだけでなく,顧問契約でのトータルサポートもさせて頂いております。ぜひ顧問弁護士の活用をご検討ください。

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