お知らせ

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飼い主から訴えられたらどうする?動物病院が知っておくべき飼い主対応の基礎知識

ペットに関する訴訟(獣医療過誤訴訟)案件の増加傾向

獣医療過誤のトラブル,訴訟に発展するケースは,数十年前にはほとんどなかったのですが,最近は年々増加傾向にあるようです。 背景には,飼い主の権利意識の高まりや,ペットを家族同様に大切にしている人が多くなったこと,獣医療費用の高額化,など様々な事情が考えられます。

訴訟に発展する具体例

獣医師の説明義務違反が問われるケース

「インフォームド・コンセント」の定義

ヒト同様,獣医療においても「インフォームドコンセント」は極めて重要です。しかし,獣医師がペットの飼い主に対して診療契約に基づいてどの程度の説明義務を負うか,法律上明確な定めはありません。

 この点,公益社団法人日本獣医師会が発表している「日本獣医師会の『インフォームド・コンセント徹底』宣言」(http://nichiju.lin.gr.jp/about/chikai_pdf/3-2.pdf)は以下のように定義づけをしています。「動物医療におけるインフォームド・コンセントとは、適正な医療サービスを提供することを目的として、獣医師と飼い主とのコミュニケーションを深め、診療に際し、 受診動物の病状および病態、検査や治療の方針・選択肢、予後、診療料金などについ て、飼い主に対して十分説明を行ったうえで、飼い主の同意を得ながら治療等を行うことを意味します。」

獣医療過訴訟における説明義務違反の有無の判断において,日本獣医師会の上記のような考え方は参考になるものと考えます。

裁判例

・手術後の輸血について説明義務違反を認めた裁判例(名古屋地裁H21.2.25)

・犬の避妊手術について当該ペットの疾患状況,リスクの説明を怠ったとして説明義務違反を認めた裁判例(名古屋地裁H21.10.27)

・犬の避妊手術について当該ペットの疾患状況,リスクの説明を怠ったとして説明義務違反を認めた裁判例(名古屋地裁H21.10.27)

誤診,検査,投薬,手術中の死亡など診療行為における過失が問われるケース

具体的な例は、猫のがんを見落とした検査義務違反があるとして慰謝料の請求を認容した裁判例(宇都宮地裁栃木支部H22.10.29)等があります。

この点につきましては、下記コラムにて詳細を解説しておりますので、ご確認ください。

https://nakama-pet.jp/news/pet-iryoujiko/

訴訟への不十分な対応に関するリスク

敗訴リスク

言うまでもない事かもしれませんが,訴状が病院に届いても放置していたり,適切な証拠が提出できなかったり,法的観点から妥当な主張反論ができなければ,敗訴するリスクが高まります(なお,訴状が来ても答弁書を出さず,裁判所に出頭しなければ,請求が認容されてしまいます)。

風評被害リスク

動物病院の多くの患者は,病院近隣住民です。ご近所の飼い主さんの噂話で「あそこの病院で○○さん家のワンちゃんが殺されたんですって」等と広まってしまえば,病院経営に大きなダメージを与えることは容易に想像できます。このような風評被害リスクを最小化するには,可能な限り医療過誤訴訟を予防する対策を取る,万が一トラブルになっても訴訟を避けて深刻化することを避けることがベストですが,提起されてしまった訴訟に適切に対応することで風評被害リスクを避けることも可能な場合があります。(口外禁止条項を入れた和解を成立させることもしばしばあります)。

訴訟を起こされたらどうする?起こされた際の対応方法

対応フロー

①「訴状」の内容を確認する

請求の内容を把握しましょう。

②「期日通知書」を確認する

第一回期日の日時,答弁書提出期限を確認しましょう。

③答弁書の記載内容を検討する

身に覚えがない請求だから争う,確かにそういうことはあったけど,事実ではないことも書いてあるから争いたいなど,支払う意向はあるが,口外禁止条項を入れて和解したい・・。様々な方向性が考えられます。この点,判決の見通しを踏まえて,ご希望に沿った解決をするために,如何なる主張反論をしていくか,期日に間に合うようにうまく整理していくことは容易ではありません。

④訴状が届いたら,可能な限り早めに弁護士に相談する

法律相談だけであればかかっても相談料1万円程度です(弊所の場合は初回無料です!)から,あれこれ考える前に,訴状が届いたら弁護士にご相談ください。

対応方法のポイント

1.事実であることとそうでないことを整理する

答弁書では,「認否」と言って,訴状記載の事実関係について,「認める」,「否認する」「知らない(不知)」などを明らかにする必要があります。これを「認否」と言います。

2.事実ではない点について,カルテ等客観的な証拠がないか確認する

争う点については,立証責任の所在によっては,こちらが客観的証拠で立証することを求められることがあります。当該患者のカルテ等客観的証拠を確認し,証拠に基づいた主張反論ができるかどうか,確認しましょう。

3.判決の見通しを立てる

原告の主張・証拠,1・2において整理したこちらの主張反論・証拠を照らし合わせて,判決の見通しを立てます。

4.和解の可能性を探る

3を踏まえて,早期解決のための和解案を検討しましょう。例えば,こちらの責任を全面的に認めることはできないが,本件医療事故のことを他の患者など第三者に口外しないことを約束してもらえれば一定の金員(解決金)を払っても良い,など柔軟な解決が考えられます。

飼い主対応で注意すべき発言・言動

1.常に録音されていると思って対応する

訴訟では客観的証拠がモノを言います。最近は,診療中にこっそり録音している飼い主さんもいるようですから,後から録音が出てきても問題がないと言えるような発言を心がけましょう。

2.飼い主の立場に立って,十二分にコミュニケーションを取る

トラブルの多くは,治療前後の説明不足が発端です。治療が好ましくない結果になってしまっても,丁寧に診てくれたのであれば納得するという患者さんが大半です。忙しいと忘れがちですが「自分がこの子の飼い主だったら,こういう風に診療してほしい,説明してほしい」というスタンスで丁寧にコミュニケーションを取ることが訴訟リスクを回避する最大の予防策と言えるでしょう。

日常から対応できる!飼い主対応のポイント

①飼い主の方への十分な説明

インフォームドコンセント,飼い主との十分なコミュニケーションがリスク回避,トラブル予防の最大の対策です。治療のリスク,複数の治療法がある場合のそれぞれのメリット・デメリット等,飼い主の自己決定権を尊重し,十二分な説明を尽くしましょう。

②契約書等の作成でリスク回避

麻酔リスク,手術同意書など,可能な限り書面で説明して同意をもらうようにしましょう。訴訟では,このような客観的証拠が,獣医師自身ひいては病院を守ってくれます。

③問題発生時の相談できる専門家の確保

上記の手段を尽くしてそれでもトラブルが発生してしまうことがあります。トラブルが起きてから弁護士を探していては適切な初動対応が取れず,トラブルが深刻化してしまうリスクがあります。極端な話,例えば,飼い主さんが突如病院に現れて,治療費を返せ!等と怒鳴り込んでこられても,顧問弁護士がいれば,「当院の顧問弁護士に確認します」とだけお伝えいただいて,初動対応から専門家に任せてしまうということが可能です。 「何かあったときにすぐ相談できる顧問弁護士」を見つけておくことが最大のリスクヘッジと言えるのかもしれません。

飼い主からの訴訟でお困りの企業様は当事務所にご相談ください

当事務所では飼い主・ペットオーナー様からのクレームや訴訟等のご相談に対応しております。

他の動物病院・獣医師の先生方からご相談をいただいている経験を生かして、貴院での対応策について適切なアドバイスをさせていただきます。

また訴訟等の問題が起きないための日常的な予防策として、獣医師・動物病院様向けの顧問プランも護用意しておりますので、法的トラブルでお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

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