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【トリミングサロン経営者向け】トリミング中にペットを怪我させてしまった場合の対処法

 

 皆様こんにちは。弁護士法人なかま法律事務所代表弁護士の中間です。

 弊所では,トリミングサロンやペットホテルのクライアントも多く,トリミング中の事故の対応についてのご相談が度々ございますので,今日はトリミング時の事故対応についてお話したいと思います。

 トリミングサロンでは、はさみやバリカンなどの刃物をつかいますから、刃物で誤って傷つけてしまったり、あるいは、施術台から飛び降りてしまって骨折したりするなど、わんちゃん猫ちゃんが怪我してしまうリスクがどうしてもあります。

 では、万が一お預かりしているワンちゃん猫ちゃんを怪我させてしまった場合、トリミングサロンとしては、どのような対応をとるべきでしょうか

 このコラムでは、トリミングサロン側が取るべき対応について、多くのトリミングサロンを支援している、ペット問題に詳しい弁護士が説明していきます。トリミングサロンでペットに怪我をさせてしまった場合の飼い主様からの要求は、多くの場合、下記の4つのいずれかもしくはすべて、です。

①治療費+②慰謝料+③施術代の返金(+④再施術の要求)

以下、

1 そもそも請求が認められるのはどのような場合か

2 認められるとしてどの程度の金額か

3 サロンとして取りうる対策はどのようなものがあるか

といったところを、以下説明していきます。

1 どのような場合に請求が認められるか

⑴ 請負契約上の債務不履行

 トリミングサロンと飼主さんとの間には,飼い主が自らのペットのトリミングをサロンに依頼し,サロンがこれを「請け負う」という民法上の請負契約が成立します。民法では,請負契約について,「当事者が仕事の完成を薬師,相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって,その効力を生じる」(民法632条)と定められています。

 つまり,トリミングサロンは,トリミングを完成させる義務」を負うと言えます。また,裁判例においては,トリミングサロンの義務として,ペットに怪我をさせないように,トリミングを行う注意義務がある,等と言われています。

 同注意義務を怠ったり,仕事を完成したと評価できなければ債務不履行に基づく損害賠償として,上記請求①~④が認められる余地が生じます。

 例えば,トリミング途中で誤って怪我をさせてしまい,トリミングが途中で終了した場合等は,債務不履行責任を負い。治療費,施術代の返金,再施術,慰謝料の支払い義務が生じる可能性があります。

⑵ 契約不適合責任(民法636条・563条・562条)

 仕事を一応完成したと評価できる場合でも,サロン側が損害賠償責任を負うことがあります。

 もっとも,「思っていたのと仕上がりが違った」といった類のクレームに関していえば,サロン側としては,代金の返還や再施術の要求等,一切の責任を負わなくてよいケースが多いと考えられます。上記(2)の契約不適合責任が生じるかどうか,という問題になるわけですが,ここで言う不適合とは,客観的にみて,契約上本来予定していた品質を欠くかどうか,という観点から考えられるところ,「思っていたのと違う」というのは,飼い主の主観の問題にすぎないから,です。

 もっとも,同種のクレームを避ける,という意味では,施術前に,仕上がりについて飼い主さんとのヒアリングを丁寧に行っておくことが好ましいでしょう。

(参考)

ペットサロン・ホテルが加入している民間団体「一般社団法人日本ペットサロン協会」によりと、トリミング店が施術中にけがをさせてしまった場合の施術量の取り扱いについて、以下のように述べています。

①ケガをさせた場合、軽微で獣医に診せなくても問題ない程度のものであれば、店側の気持ちとして減額することはありえますが、しなくても理屈上は問題ありません(店の評判に関わりうることかもしれませんが)。

②獣医の診察・治療が必要な程度であれば、カットが仕上がっていても、診察費分は差し引くことになります。

③ケガの程度がさらに酷い場合は、仕事は完成していないとして代金の請求もできず、 お客さんから治療費以外の損害(慰謝料など)賠償請求を受ける可能性もあります。

2 認められる場合の金額相場と裁判例

⑴ 金額相場

 治療費はよほど大きな怪我でないかぎり,数万円〜10万円ほどにとどまるのが通例です。慰謝料は、ゼロ〜数万円にとどまることが一昔は多かったですが、ここ10年、20年の裁判例をみると、数十万円(10〜70万くらい)になるケースもしばしば見受けられます。

⑵ 裁判例

トリマーが誤って猫の尻尾を切断してしまった事例(東京地H24.7.26)

【事案】

Aさん家族は飼育していたペルシャ猫(以下「本件猫」といいます)のトリミングをBサロンに依頼した。BサロンスタッフCは,トリミング中,バリカンをかけていたところ,毛玉ができて視野が悪くなったので,毛玉を切ろうとして鋏を入れたところ,誤って猫の尻尾を5センチ程度切断してしまった。すぐ動物病院で手術を受け,傷はふさがり後遺症もなかったが,尻尾は元に戻らなかった。

Bサロンから誠意ある謝罪がなかったため,Aさんは,Bに対して,治療費や慰謝料40万円を請求した

【判例要旨】

a  トリミングを実施するに際しては,信義則(筆者において修正)上,本件猫の安全に配慮し,これを傷つけることのないようにトリミングを行うべき注意義務を負っているところ,これに違反して,Cは,その事業の執行にあたるトリミング中に誤って本件猫の尻尾の一部をハサミで切断してしまい,原告らの所有物を毀損した(以下「本件不法行為」という。)ことが認められるから,民法715条に基づき,原告らに対し,これによる損害を賠償すべき義務を負う

b 本件では,以下の事実が認められる。

 ・Aら家族は,本件猫を家族の一員として愛情を注ぎ,大切に養育してきたこと

 ・本件事故により,本件猫の尻尾の一部が永久に戻らないこと

 ・本件猫の元気がなくなり,一時痩せてしまったこと

 ・本件猫が以前と違い人や物音に非常に敏感になり,Aらになつかなくなったこと

 ・Aら家族が肉体的にも精神的にも疲弊し,そのため,不眠,食欲不振,体重減少等の体調不良におそわれ,通院を余儀なくされたこと

 ・Cは反省しているが,Bの経営者は,ペットを物としかみず,謝罪の態度も示していないこと

c Aの慰謝料について検討するに,確かにペットは法的には「物」として処理されることになるが,ペットの場合は動産とは異なり,生命を持ち,自らの意思を持って行動し,飼い主との間には種々の行動やコミュニケーションを通じて互いに愛情を持ち合い,それを育む関係が生まれるのであるから,その意味では人と人との関係に近い関係が期待されるものであるAら家族と本件猫との間には,まさに互いの愛情に発したこのような関係が構築されていたものと推認される。

 したがって,BCらが不注意な処置を講じたことにより,本件猫を傷つけただけでなく,本件猫を家族の一員とも思い,愛情を持って大切に育ててきた本件猫に大きな衝撃を与え,を深く悲しませたことは想像するに難くない。また,本件事故後の本件猫の変わり果てた様子に傷つき,さらに本件猫の介護等に特に注意をしなければならなかったこと等に思いを致せば,Aらの精神的・肉体的損害は決して軽視することはできない

d 以上の事情を総合考慮し,慰謝料は,Aら家族全員分として10万円,A1は本件事故後,本件猫の通院と介護のため献身し,それがため精神的にも肉体的にも疲弊し,通院までしたこと,A1を除くその余の原告らの精神的損害は同程度とみられることをも併せ考慮すれば,A1の慰謝料額は4万円,その余の原告らは各2万円と認めるのが相当である。 

3 サロンとして取りうる予防策と万が一怪我をさせてしまったときの対処法

⑴ 予防策

 上記で紹介した裁判例にあるように,日本の裁判制度上,ペットが怪我した場合の飼い主の慰謝料は,かなり低額な金額になることが想定されますが,近所の風評や,インターネットのクチコミ,何よりサロンの信用に重大な悪影響を与えることを考えれば,お預かりしている大切なペットを傷つけることがないよう,サロン側が最大限配慮しなければなりません。

例えば,

ア ハサミでびっくりするとか,過去に施術台から飛び降りたり施術中に暴れることがあったとか,当該犬猫の性格についてお預かり時にしっかりヒアリングして,その子に合った対応をする

イ トリマーの教育体制を充実させる

といったサロン側の対応によって,トラブルのリスクを減らすことが考えられます。

⑵ 万が一けがをさせてしまったときの対処法

  ステップとしては以下の通りです。

 ア 兎にも角にもまずは誠心誠意を持って謝罪する

 ィ 提携している動物病院または飼い主さんのかかりつけの動物病院に速やかに連れて行く

 ゥ 保険を使えるか確認する

 ェ 弁護士に相談する

 誠意をもって,ペットを最優先して行動しましょう。怪我させてしまった時に使える保険があるか,日頃から確認しておきましょう。

4 弁護士にご相談ください

 弁護士が作成した契約書やマニュアルによって,トラブルが回避できたり,トラブルが起きてしまった時のサロン側の被害を最小限に食い止めることも可能です。

 弊所では、予防策の実施からトラブル発生後の対応まで、顧問契約でのトータルサポートが可能です。ぜひ専門家の活用をご検討ください。

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